ROONサーバーを作る(4)
今回は弊社がやってきて効果的だった対策やパーツを惜しみなく投入しました。
ROON Server built by JS PC Audio
パーツのチョイスはハイファイ堂の越濱氏が行い、弊社が組み上げたスペシャルな一台です。スチールや銅を多く使用したことで総重量は12.5kgとなりました。
【基本構成】
- アルミエンクロージャー HDPLEX H5 BLACK
- CPU Intel CPU Core i5-14500T
- マザーボード ASUS ProArt Z790-CREATOR WIFI
- メモリ G.Skill F5-6800J3445G16GX2-RS5K (シングルチャンネル)
- ストレージ(m.2)Western Digital WDS250G3B0B
- ATX電源 HDPLEX DC-ATX 500W
【追加パーツ】
- ストレージ(SATA)Silicon Power SU128GBSS3A55S25AH
- ネットワーク(LAN)カード JCAT NETCARD FEMTO
SATA-SSDはm.2との比較試聴用に追加しました。
それでは各部をご紹介。
底面です。3.2mmのスチールで製作した底板に電磁波シールド塗装を施しました。
このマシンの大事な基礎となる底板を透磁率の高いスチールとすることで耐ノイズ性能を上げています。
背面はオリジナルのパネルを生かして製作しました。
PCIスロットは右から「JCAT NETCARD FEMTO用クロック入力(SMA / 50ohm)」「SATA-SSD用電源入力」「JCAT NETCARD FEMTO(以降、JCAT NIC)」の順。残りは全て銅メッキをかけたブランクパネルで塞いでいます。
電源(DC12V〜)の入力部は銅板で製作。CPU用の電源を分離できるよう2口のパネルも製作しています。
この2口のパネルを使えばCPU直接入力用、DC-ATX用と分けて入力させることが可能となります。
一番上の銅板で囲われている部分はSSDマウンタ、真ん中に2つ並んで見えるものがメモリスロットに取りつけるシールド、シルバーのフィンの部分はCPUクーラー。ワイヤリングの関係でヒートパイプは7本使用。
先ほど背面パネルのところで触れましたが、SSDは外部給電です。
何年も前から構想はあって、今回ようやく実現できたメモリシールド。
空きスロットに取りつけます。DDR4とDDR5両方に使えるよう設計しました。
メモリと同じ規格で基板をおこして銅板と組み合わせ、アース線を取り付けています。このシールドについては後日詳しく記事にします。
メモリシールドを別角度から。メモリはシングルチャンネルで使用していて、それを二枚のシールドで挟んでいます。
専用に製作した各種ケーブルです。全てシールド処理しています。
銅板シールド(超ロングタイプ)やJCAT NICは側面パネルと固定していて、特にJCAT NICの固定は効果があります。
JCAT NICは外部クロック化を行い、潤工社のジュンフロン線を使用。カードの固定はペリフェラル4Pコネクターを取り外した部分の穴を利用しています。
細かい部分はまだまだありますが、主に以上の内容で製作を行いました。
前回もご紹介したこの専用電源と接続して約2週間のバーンインを行いました。
後日改めて試聴編を記事にしようと考えています。
まずは弊社の検聴で使用している旧世代Xeon(E3)マシンとの聴き比べから。
※今回のコラボレーション企画は越濱氏とのコラボであり、ハイファイ堂は一切関係はありません
【今回の企画に使用した弊社製品】
・マザーボードアンダープレート
https://www.shop-jspcaudio.net/shopdetail/000000000186/
※インシュレーターフットのねじを逃がすための穴開け加工が必要
・オリジナルSATAケーブル SOC1
https://www.shop-jspcaudio.net/shopdetail/000000000151/
・PCファンノイズフィルター FNF20
https://www.shop-jspcaudio.net/shopdetail/000000000262/
※ブラックのケーブルで製作
【今回の企画で使用したパーツのうち製品化したもの】
・PCIブランクパネル(銅メッキ・ロープロファイル)
https://www.shop-jspcaudio.net/shopdetail/000000000267
・銅メッキビス(インチ)
https://www.shop-jspcaudio.net/shopdetail/000000000269/
・銅メッキビス(ミリ)
https://www.shop-jspcaudio.net/shopdetail/000000000268/
ROONサーバーを作る(3)
パーツが揃ったら組み付けていきます。
SSDのマウンタは1.6mm厚のスチールで製作したもの。ケーブルの取り回しを良くするために銅メッキをかけた真鍮スペーサーで高さを出しています。
背面のIOポート側。
HDPLEXのロゴのある開口部は銅板でフタをし、外部電源の入力部分のプレートは2mm厚の銅板で製作。画像のプレートは1口のものですが、CPU用の電源を別供給にできるよう2口のプレートも用意しています。
こちらは特別仕様のファンノイズフィルタ(FNF20)です。
PC内部のイメージにあわせてケーブルをブラックで製作してみました。FNF20はファンを接続しなくてもノイズ低減効果がありまして、今回は2個導入します。
ひとつは使用していないM.2スロットのヒートシンクを利用してセットしました。
さて、こちらは今回のプロジェクト用に製作した電源です。
鋼鈑で仕切りを作り3つのブロックに分けています。
左はメインの電源で400Wのスイッチングモジュール。医療用でローノイズかつ電圧調整式をチョイスしました。
中央は特注のRコアトランス、右は5V二系統、JCAT NIC FEMTO用のクロックとなっています。
メインの出力部は大電流に対応したPowerDIN(4P)です。コネクターに抜け防止のロック機構があり、安定して動作させることができます。
DC5V×2の出力とクロック出力部。
DC5Vは超ローノイズレギュレーターモジュールで生成し、SSD、JCAT NIC FEMTOにそれぞれ供給します。
クロックは位相ノイズの低いOCXOを採用。低損失な計測用のテストケーブルを直接接続できるようSMAとしました。
(今回の製作のポイント)
・各部に銅(銅メッキ)を使用することでアルミケースでは抑制できないノイズの反射を抑える
・ファンノイズフィルタはCPUの周辺のコネクタに接続する
・外部クロック化において低損失のテストケーブルで接続できるようSMAコネクタを採用
・PC〜外部電源間は抜け防止機構があり安定した接続ができるPowerDINを使用
次回は全てのパーツを組み付けて完成形のお披露目です。
ROONサーバーを作る(2)
今回は内部配線類についてご紹介します。
こちらが組み上げるPCの内部で使うもので、すべて現物合わせで製作したものです。
まずは外部のDC電源を入力するケーブルから。
電源の入力コネクターはPowerDIN(4P)です。OFCワイヤー4本を手撚りし、シールドスリーブ+アース仕上げ。二次側はHDPLEX DC-ATX500Wに接続します。
続いてATX24PINケーブル。
最短で無駄なく接続できるよう二つに分け、細かく長さを整えながら製作しました。こちらもシールドスリーブ+アース仕上げ。
こちらは主にCPUへの電力を供給するEPSケーブル。
今回使用するマザーボードは8Pin+4Pinのため3本に分けて製作しました。EPSケーブルについてはまたのちほど。
越濱氏のパーツ選定のレギュレーションには入っていないものですが、折角の機会ですからカスタムしたJCAT NIC FEMTOも組み込んでしまおうということで、以前ご紹介した外部クロック化を行うためのRFケーブルです。
ケーブルはスイッチングハブ(HFSシリーズ)でも使用している潤工社のジュンフロン線。カード側のコネクターはSMB、入力部はSMA。
弊社の検聴用のJCAT FEMTO用に製作してみて非常に良かったのでこのプロジェクトに採用しました。
レギュレーションのストレージはM.2-SSDですが、折角の機会なのでSATA-SSDも搭載することにしました。OS用にするもよし、音源用のストレージにするもよしということで。
「硬い」「使いづらい」と多くの厳しいご意見をいただくSATAケーブル(SOC1)です。実は作っている私ですら作りにくいし使いにくいと思っています。
SSDは背面のPCIスロットから外部給電にします。
PCIブラケットにDCジャックを取り付け、ここもやはりシールドスリーブ仕上げ。
ブラケットを導電性塗料で塗装したことはあるのですが、銅メッキは初めての試みです。バレル処理では平面同士が密着してしまい、ムラができてベストな仕上りとはなりませんでした。とりあえず試作だからと言い訳しつつ、よしとしておきます。
(今回の製作のポイント)
・内部配線は各パーツに合った長さで製作する
・ケーブルにシールドを施してシャーシに落とせるようにする
以上、PCケースの中で使用するケーブル類のご紹介でした。
さて、先ほど申し上げていたEPSケーブルですが、ここのケーブルのクオリティによって音質がかなり変わってきます。
クオリティを上げる方法としては
(1)ツイストをかける
(2)ケーブルの質を上げる
(3)構造や製作方法にこだわる
となるかと思いますが、最も簡単なのは(1)で、自作派の方はねじっておられる方も多いかと思います。20年くらい前でしょうか。自作を始めたころの私もそうでした。
しかし、電源に付属するケーブル(両端にコネクターが付いたまま)をねじった場合、ツイストにした効果はあっても、絶縁体が大きく変形しワイヤー自体の撚りが変わってしまうことがあったり、コンタクトに負担がかかったりとあまりお勧めできません。
従いまして専用工具の使用が前提となりますが、電源に付属のEPSケーブルにツイストをかける場合は、片側のコネクターのハウジングから一旦コンタクトから抜いていただき、自然な撚りを作って組み立てられるのをお勧めします。
工具を使わない場合は、ゆるく1〜2回ねじる程度に抑えるのがベストです。
また、断面がこうなるように意識して撚ってみてください。
コネクターの配列が横一列ですから撚り始めと終わりがズレてしまったり長さが余ったりするかもしれませんが、同じ極性同士が隣り合うよりも効果が高くお勧めです。
さて、今回の記事でご紹介した「銅メッキのPCIブラケット」も大量に作りましたので商品にさせていただきました。
多少の色ムラがありますが品質は問題ありません。
https://www.shop-jspcaudio.net/shopdetail/000000000267
銅メッキ処理のみですから10円玉と同じように素手で触ると黒く酸化しますので予めご了承ください。
Type-C対応 外部給電型USBケーブルの試作
大変お待たせいたしました。
ターゲット側がType-Cの機器に対して外部給電が可能なケーブルの試作品ができあがりました。
今回は「Type-Cコネクタ」+「ノイズコントロールボックス」に対応するために専用のオリジナル基板を設計製作しました。
従来モデルと同じくこちらからDC5V(2.1mm/5.5mmコネクタ)を入力させます。使い勝手は全く同じです。
Type-Cコネクタのサイズに対して少し大きいですが、使い勝手は悪くありません。
さて今回の試作品はノイズコントロールボックスに改良を加え、旧バージョンを凌ぐ音質を得られています。
これから現在のUSBケーブルのラインナップを見直し、新しいバージョンの販売を検討してゆく予定です。どうぞお楽しみに。
最近は特注などの対応が多く通常製品の見直しに時間がかかっていました。申し訳ありません。
USBケーブルの新バージョン販売にともなうアップグレードなど、現在お使いのケーブルを今後もご愛用いただけるようプランを考えてまいりますのでどうか今しばらくお待ちくださいませ。
今の弊社はといいますと、Diretta Taget DST-00のカスタム作業に追われています。アルミケースの納品の都合で少しスケジュールが押してしまっていますが、これからチェックと納品に入っていけそうな状況です。
カスタムに関してはいくつもこだわりがあるのですが、例えばコネクター。弊社の製品の内部配線ではほとんどコネクター類は使っていないのですが、今回はスイッチング電源ユニットがあるため一つずつ作業しています。
コネクターは専用工具でカシメたあと、すべてはんだを流しています(上がはんだを流したもの、下はカシメただけのもの)。
ケーブルは内部配線でよく使用しているモガミ電線のフックアップワイヤーです。
ケーブルにツイストをかけてコネクターを組み立てていきます。
シールドスリーブをかぶせてGNDの処理をして完成。これはDC側ですが、AC側も同様の処理を行っています。
作業待ちのブラックのフェイスパネルです。ブラックモデルも素敵だなと思います。
と、弊社ではこのように作業を行っています。早くお届けできるよう努めておりますので、もう少しだけお待ち下さいませ。
JCAT NET Card FEMTO外部クロック化【試聴結果】
前回の記事からOCXOが安定するまで約10日間置いて試聴してみました。
電源ケーブルはTPC-X1、BNCケーブルはサイバーシャフトさんの「50ΩBNCケーブル(RG58A/U)」を使用しています。
カスタムNIC(JCAT NET Card FEMTO)をテスト用PCに組付けた状態です。
4つあるPCIスロットは上から「JCAT NET Card FEMTO」「JCAT USB Card FEMTO」「PCIノイズシールド」「グラフィックカード」の順に並んでいます。
PCIノイズシールドは過去の記事でご紹介したものです。商品ページはこちら。
OSの起動は先に電源を入れたクロックとPCをBNCケーブルで接続してから行います。
現在のテスト用PCの起動ディスクは二つあって、Windows10とGentooplayerのデュアルブート環境にしていますが、今回はWindows環境(Roonサーバー)で聴き比べを行います。
※Gentooplayer環境でハードウェア(CPU、PCIカード類)を変更して動作させる場合はキーの再取得が必要
試聴結果
とても滑らかな音で全帯域の位相の乱れがピタッと落ち着いた印象です。サウンドステージの深さにも驚かされます。
私しか分からないことですが、最初に音が出たときのスタッフの「あぁ・・・」に私も頷くばかりです。
分析的に聴いてみると、これまでのシステムの低域に鈍さを感じるスピード感。とにかく音の立ち上がりが早くリアリティも大きく向上しています。フュージョンのベースのスラップ、ジャズではウッドベースの弦を弾く音や胴鳴り、バスドラムを打つビーターのアタック音。全てに空気感を纏った音に聞き入ってしまいます。
中高域の実在感は各段に増していて、ホログラフィックなサウンドを楽しめるようになりました。ソースの音の一つ一つがあるべき時間にあるべき位置で正しく鳴っているイメージです。こういう自然な音は長時間聴いていられますし、小音量でも充分音楽に浸れます。
何もカスタムしていないノーマルのカード(NET Card FEMTO)に戻して試聴してみます。
音の密度が薄くなり奥行きが減って窮屈な音場に戻ってしまいます。中低域の音の輪郭が曖昧になり多少の雑味を帯びていて、先の音を聴いたばかりに物足りなさを感じます。
外部クロック化したカードを100点とするならばノーマルのカードは75点といったところでしょうか。一聴して分かるこの差は非常に大きいです。5Vの外部入力だけでは超えられない壁が存在していることがよく理解できました。
ノイズ源であるクロックへの電源の供給元が別になることと、可聴帯域の位相雑音レベルが低いことで今回の音質向上が得られたのですが、これは弊社のスイッチングハブの開発やSoundgenicカスタムのときに得られたものと共通していて、オーディオシステムはアイソレートしない限り機器は繋がっていてノイズは伝わりますから、PCで高音質を突き詰めてゆくのであればクロックのローノイズ化は必須だと感じます。
さて、今回のカスタムには注意点があります。
NICの基板にSMBコネクタを付けると画像のように1スロット分では収まらず、約5mm程度はみ出してしまいます。
また、OCXOは通電してから安定するまでの一週間は本来のパフォーマンスが得られません。具体的には高域がギラついたり低域の出方が悪くなったりします。従いましてクロックは基本的に常時通電(PCの電源は切っていただいて構いません)となります。
ロープロファイルでご利用の方は、中継型(ジャックの付いたケーブルが出る格好)で製作ができるかもしれません。
ご希望があれば承りますが、OCXOの在庫が少なく流通量も僅かなため、5〜6件程度になるかと思います。
年末あたりまで特注モデルの製作や限定モデルの販売等の関係で納品できないかと思いますが、ご希望の方はお問い合わせくださいませ。
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